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税制適格ストック・オプションと法定調書の提出について

最終回答:2021/06/11 09:20
回答した専門家:1人

QUESTION

以前、税制適格ストック・オプションについて質問した者です。
「法定調書の提出は税制適格要件ではない」というご回答を頂いたのですが、顧問の税理士さんが納得してくれず、私もうまく説明できません。
税制適格要件ではないと言えるのはなぜでしょうか?

ANSWER

回答日:2021/06/11 09:20
ベストアンサー

会計士・社労士の高橋です。
ご質問の件ですが、租税特別措置法第29条の2をよくご確認頂ければ分かると思います。
話を分かりやすくするために権利承継相続人や特定従事者に対して新株予約権を付与する場合については割愛し、取締役等に付与する場合を想定してご説明します。

まず、税制適格要件(権利行使時に権利行使者に対して所得税が課されない要件)は租税特別措置法第29条の2第1項及び第2項に定められています。

第1項では、税制適格の大前提として、新株予約権割当契約において次の要件が定められていることを求めています。

(1)新株予約権の行使は、当該新株予約権に係る付与決議(付与決議の意義については別のQ&Aをご参照下さい。)の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行わなければならないこと。
(2)新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間(1月1日から12月31日までの暦年)の合計額が、1200万円を超えないこと。
(3)新株予約権の行使に係る1株当たりの権利行使価額は、新株予約権割当契約を締結した株式会社の株式の当該契約の締結時における1株当たりの価額(時価)に相当する金額以上であること。
(4)新株予約権については、譲渡をしてはならないこととされていること。
(5)新株予約権の行使に係る株式の交付が当該交付のために付与決議がされた会社法第238条第1項に定める事項に反しないで行われるものであること。
(6)新株予約権の行使により取得をする株式につき、金融商品取引業者等との間であらかじめ締結される契約に基づき、会社を通じて、金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、又は当該金融商品取引業者等の営業所等に保管の委託若しくは管理等信託がされること。

割当契約において、上記の(1)~(6)の要件が定められている新株予約権を「特定新株予約権」といいます。
そして、租税特別措置法第29条の2第1項では、「付与決議に基づき会社と取締役等との間に締結された契約(新株予約権割当契約)により与えられた特定新株予約権を、割当契約に従つて行使することにより株式の取得をした場合には、株式の取得に係る経済的利益については、所得税を課さない」と定めています。

さらに第2項において「前項本文の規定は、権利者が特定新株予約権の行使をする際、次に掲げる要件を満たす場合に限り、適用する」としていて、その要件として、権利行使時に権利行使者が会社に対して一定事項を記載した書面を提出することを求めています。

以上から、権利行使時の経済的利益に所得税が課税されない「税制適格要件」とは、
1.付与対象者が取締役等(ただし、大口株主等を除く)であること。
2.新株予約権割当契約書に一定要件(上記の(1)~(6))が定められていること。
3.新株予約権者が割当契約に従って権利行使すること。
4.権利行使時に一定事項を記載した書面を会社に対して提出すること。
ということになり、税制適格要件について定めている租税特別措置法第29条の2第1項及び第2項では、法定調書の提出については一言も触れていません。
(租税特別措置法第29条の2第1項及び第2項のほかに、租税特別措置法施行令第19条の3第1項において、「金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付をさせないで発行された新株予約権であること」という点も税制適格要件として加えられています。)

一方で、法定調書の提出については、租税特別措置法第29条の2第6項で定めています。
そこでは、「付与決議に基づく契約により取締役等に特定新株予約権を与える株式会社は、特定新株予約権の付与に関する調書を、その付与をした日の属する年の翌年1月31日までに、税務署長に提出しなければならない」と定めています。
つまり、税制適格要件の一つである、一定事項(上記の(1)~(6)の事項)を割当契約で定めた新株予約権(特定新株予約権)を取締役等に付与した場合は、翌年1月末までに法定調書を提出しなければならないと定めているのみで、「法定調書を提出しなければ、権利行使時の所得税の非課税について定めている租税特別措置法第29条の2第1項を適用できない」というような定め方になっていないのです。
以上から、「法定調書の提出は税制適格要件ではない」ということになります。

また、もしも仮に法定調書の提出が税制適格要件であるとすると、例えば従業員に新株予約権を付与した場合、本来、税制メリットを受けるはずの従業員の預かり知らぬところで、事後的に会社の方で税制適格ストック・オプションの付与対象者を操作する(税制適格にしたくない場合は、翌年1月末までに法定調書を提出しなければよい)ということが可能になってしまい大変不合理な結果になります。この点からも法定調書の提出がそもそも税制適格要件となり得ないことは明らかであると思います。

ちなみに、私の過去の経験で、割当契約書に記載すべき上記(1)~(6)のうち、特に(5)の記載について漏れている事例が非常に多いです。
(5)は、権利行使が法令で定めた事項に反しないで行われることという、いわば当たり前のことなので、記載していない事例が頻発していると思います。
しかし、当たり前のことを敢えて条文上で「当該新株予約権に係る契約において、次に掲げる要件が定められているものに限る」と明示している以上、この記載は必須ということであると思いますので注意が必要です。
(回答は令和3年6月11日現在の法令に基づいています。)

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専門分野
会社設立・許認可 会計・税務 経営計画・改善 人事労務 資金調達
保有資格
公認会計士 税理士 中小企業診断士 社会保険労務士 事業承継士

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